説教ノート(ある信徒の覚え書きより)


聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書(著作権・日本聖書刊行会)によります。

97年6月29日

「聖礼典の意義」

    井川 正一郎 牧師

第1コリント11章23−32節

中心聖句:

  私は主から受けたことを、あなた方に伝えたのです。すなわち、主イエスは、渡される夜、パンを取り、感謝をささげて後、それを裂き、こう言われました。

「これはあなた方のための、わたしのからだです。わたしを覚えて、これを行いなさい。」

 夕食の後、杯をも同じようにして言われました。「この杯は、わたしの血による新しい契約です。これを飲むたびに、わたしを覚えて、これを行いなさい。」

 ですから、あなたがたは、このパンを食べ、この杯を飲むたびに、主が来られるまで、主の死を告げ知らせるのです。(23〜26節)

教訓:礼典の意義を知り、礼典的生活を送りましょう。


導入

 今日は上半期を締めくくる聖餐礼拝の日です。聖餐式は聖書に明記された2つの聖礼典(洗礼と聖餐式)のうちの一つです。私たちの教会はプロテスタントで、この2つの聖礼典を守っています。カトリック教会ではこれより多い7つの秘蹟-[sacrament:洗礼、聖餐礼(ミサ)、堅信礼、懺悔、結婚礼、叙階礼、終油礼]が定められており、その全てを行うことが、天国に召されるのに必要であるとされています。聖餐式については、プロテスタント系の教会でも、多い教会では毎週・毎月行うところもあれば、年数回行う私たちのような教会もあり、頻度は様々です。わたしはこの聖餐式を受けるたびに、非常な厳粛な思いが致しまして、個人的に大変好きです。
 今朝は、そもそも聖礼典はどの様な意義があるのかという点を中心に、冒頭の箇所から私たちが覚えさせていただきたいことを、2つの角度から考えさせていただきたいと思います。


(1)聖礼典とは何か?

 聖礼典とは、主イエスが自らお命じになられ、神の恩恵を受けるために定められた、教会礼典のことです。言い換えますと、神様からの恵みが与えられるために必要な「恩寵の手段」という方法論の一つです。「恩寵の手段」は、神様から与えられる恵みを目に見える形にしたもので、その行いに対して神様の恵みが与えられます。例えば、私たちは求道者の時、悔い改めをしますが、それに対する恩寵の手段として洗礼があり、この行動を通じて神様から様々な霊的な恵みを頂くことが出来ます。
 信仰が最も基礎的で重要であることは言うまでもありませんが、ただ信仰心を持っていると言うだけでは、恵みは頂けません。洗礼は、ある意味で公に対しての信仰告白になりますが、それだけに意味があるのではなく、その営みを通じて我々に神様の恵みが与えられる、ということを良く理解しておきましょう。この事は聖書にはっきり記されています。
  聖餐式も同様に恩寵の手段です。聖餐式を通じて与えられる恵みには、

i)罪が十字架により赦される、
ii)イエス様と結びつくことで、魂の充足と平安を得る、
iii)将来の栄光の恵みに対する確信が得られる、

という3つの点が挙げられます。

  信仰は心の内側にあるもので、また内側にあるべきものですが、時に神様はそれを行動に表すよう我々に求められることがあります。この行動を行うことにより、内側に信仰がさらに強化されるのです。この意味で恩寵の手段(集会出席、デボーション、家拝、聖礼典など)は大切にしなければなりません。
  このような恩寵の手段を大切にする生き方を、わたしは「礼典的生涯」と呼んでいます(過去の説教
「礼典的生涯の吟味」参照)。


(2)「わたしを覚えてこれを行いなさい」

 冒頭の箇所で語られた内容には明確に、聖礼典を行いなさい、という指示が含まれています。では私たちはどの様な姿勢で聖礼典に望むべきなのでしょうか?この点について3つの観点から簡単にまとめてみたいと思います。


i)心から行いなさい。
外側に表すことだけでなく、あくまでもその行動に心がともなっていなければなりません。27〜28節には「自分を吟味し...」とあります。聖礼典に望むにあたって、私たちはその心のあり方を今一度探らせていただきましょう。


ii)繰り返して行いなさい。
27節に、「これを飲む度...」と書かれていますが、聖礼典は繰り返し行う必要があります。これは、スポーツの基本練習のように、反復することによってその基本が身につくようになるからです。ただし繰り返すからといって、マンネリ化してはなりません。毎回最初と同じ様な新鮮な気持ちで望ませていただきましょう。


iii)いつもあたかもこれが始めてであり、また最後であるかのような気持ちで望みましょう。
初めの愛や恵みを忘れてはなりません。常に初めのスピリットに戻り、そして常に新しい献身のスタートを切るようにしましょう。(ゼカリヤ7章3〜6節参照)長年やってきたからこそ、新鮮な気持ちを持ちつつ、長年さらに続けることが大切です。



しめくくりに今週の生活に対する適用をまとめましょう。

1)この一週、今日の聖餐式の姿勢を毎朝持たせていただきましょう。つまり毎朝、心の聖餐式を行うのです。


2)
常に今の時を大切にしましょう。今一瞬イエス様に心も向け続けることにより、神様の恵みがますます加えられます。過去のことは忘れて、今に集中することが大事です。

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