説教ノート(ある信徒の覚え書きより)


聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書(著作権・日本聖書刊行会)によります。

97年10月12日

「奇しいわざを見せよう」

井川 正一郎 牧師

ミカ書7章1〜20節

中心聖句:

 「あなたがエジプトの国から出た日のように、
私は奇しいわざを彼に見せよう。」

(15節)

教訓:自分の心を探り、あきらめずに神様の恵みをもう一度求める


導入

ミカ書という預言書は、いまから2750年前、紀元前750年頃にミカによって記されたものです。ミカは、有名な預言者イザヤと同じ時期に活躍した人物です。イザヤがヒゼキヤ王やその当時の指導者層を相手にした奉仕をしたのに対し、ミカは「田園預言者」と呼ばれるとおり、民衆を相手に活躍した人物でありました。その働きは、イザヤに比べると地味に見えますが、決して劣っているわけではありません。

ミカ書は、大きく分けて1〜2章、3〜5章、6章〜7章の始め、7章後半以降の4つの部分から構成されています。このうち最初の3つの部分の始まりは皆「聞け」という言葉がふくまれ、統一されています。今日取り上げる箇所は、その中の最後の部分で、ユダヤの王国の回復(当時北王国イスラエルはアッシリヤによって滅ぼされ、その後暫くして南王国ユダも勃興してきたバビロンに滅ぼされた)についての神の約束を預言しているところです。

2章の10節では、その不信仰の罪の故に滅ぼされた北王国と同じように、南王国も大変な罪の中にあることが記されています。その罪の元凶は、当時の南王国の指導者層の不信仰であり、民全体もそれに呼応するかのように不信仰に陥ってしまったのです。

5章に入ると、その罪に対する報いであるエルサレムの包囲が書かれ、また「ベツレヘムに生まれる救世主」についての記述が見られるようになります。

6章は、神とその民を代表したミカとの論争になっていて、宗教的偽善、神にたいする忘恩、偶像崇拝、敬虔な者は誰もいないというような信仰的堕落、について語られています。これは7章の始めまで続き、そのような暴虐・裏切りが必ず裁かれることが明言されることになります。

しかし、そのような状況にあっても、7節の後半で取り上げられるように、神はもう一度民を罪から救い出される働きをされる、というすばらしい約束が示されるのです。

今日扱おうとしているこの箇所の中心的なメッセージは、神様は私たちにもう一度回復の「奇しいわざを見せよう」と約束されているということですが、次にその約束が果たされるために必要な条件についてまとめてみたいと思います。


1)心から悔い改めること

 7章9節に

「私は主の激しい怒りを身に受けている。

私が主に罪を犯したからだ。」

と書いてあります。ここでミカがしたかったことは、民全体の罪を自らのものとして神に告白し、身代わりになって悔い改めると言うことなのです。自分自身のことでないことまで、悔い改めなければならないほど、彼をとりまく状況は逼迫(ひっぱく)していたのでした。

このように、神が奇跡的な働きをもう一度されるためには、民自身がその悪い行いを悔い改めることが必要です。心の罪の問題の徹底的な解決がなければ、神様は奇跡など起こしてくれようもないのです。


2)信仰を捨てないこと

8節では「起きあがる」ということが強調されていますが、これは信仰を捨てないと言う事を意味しています。言い換えると、どんなに苦しくとも、落ち込んでもがこうとも、先の見えない暗闇の中を通っても、決して神への信仰を失わないことが、奇跡を呼ぶのだ、という事なのです。これと同じような言葉は、コリント人への第2の手紙4章8〜9節や、箴言24章16節(ちなみに私はここを聖書の「七転び八起き」と呼んでいます)にも見受けられます。

罪を犯しては悔い改め、ということをあまり何度も繰り返すことは避けなければなりませんが、長い人生の間には意図しない間違えや挫折などは誰にでもあることです。しかしこのようなときに不屈の信仰を持ち続けることで、神様は必ず奇しい業を為して下さいます。これを信じて辛い中にある方も待ち望みましょう。


3)恵みがもう一度残されていることを知り、それにすがること

冒頭の箇所では、神様の約束として「出エジプト相当の奇跡」を行うことが宣言されています。19節では

もう一度、私たちをあわれみ、
私たちの咎を踏みつけて、
すべての罪を海の深みに投げ入れて下さい。

とあります。なぜミカはここまで真剣な祈りを神にささげたのでしょう。それは神がもう一度人間のために回復のチャンスを供えていて下さることを、ミカが知っていたからなのです。

8節でミカは「主は私の光」と告白しています。この光は、明るさ、未来、希望、そして導きを象徴する言葉です。私たちにはどんな場合にも、このような希望の恵みが残されているのです。


 今日のメッセージを今週の生活に適用するためには、何をするべきなのでしょうか?二つの面からまとめてみます。

1)あきらめない。

最後の最後まであきらめないこと。もう一度必ずチャンスがあるということを知るべきです。物事が駄目になる最大の要因の一つは、自分から降りてしまうことです。

2)自分の信仰を吟味する。

結局信仰は自分と神様の問題であり、他人との問題ではないのです。神は私の光という信仰告白が出来ることが大切です。


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