礼拝メッセージの要約

(教会員のメモに見る説教の内容)


聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書(著作権・日本聖書刊行会)によります。

99年5月9日

子供の日礼拝

キリストにさしあげたお弁当

さおしろ てるお 牧師

ヨハネのふくいんしょ6章1〜14節

中心聖句

9 ここに少年が大麦のパンを5つと小さい魚を2匹持っています。

(9節)

アウトライン:

5月5日がこどもの日、そして今日は母の日です。この日、子供の日礼拝として、イエス様にお弁当をさしあげた少年の話をいたしましょう。

イエス様にお弁当をさしあげた少年の話しは、周囲の人に自分の食べ物を分け与える愛と、どんなちっぽけなものも神様のみ手によって動かされるなら大きな働きをすること、そしてすすんでささげることの大切さを教えてくれます。

教訓:愛を持ってすすんで行う献身


導入

 まず最初に大切な質問をします。今日お弁当を持ってきた人?...はい、有り難うございます。大人は恥ずかしいのでこのぐらいしか手を挙げません。(笑)

 どんなお弁当ですか?そうっと聞きたい気もしますが、プライバシーに関するからあんまり聞きません。(笑)

 お弁当は楽しいですね。わたしもお弁当を持ってきました。今日は事情があって、作って下さる人がおりません(ご婦人が渡米中)ので、自分でこそこそと作って持って参りました(笑)。あんまり興味を持ってナザレ会の部屋(主牧先生がお弁当を食べる場所)に来ないで下さい(大笑)。


 今日はイエス様にお弁当を差し出した男の子の話しをします。

 さきほど読みました聖書の場所で、その少年は「ここに少年が大麦のパンを五つと小さい魚を二匹持っています。」(ヨハネ6:9)と書かれています。聖書の中で名前が書かれていませんので、わたしが仮にこの少年の名前を「ナタン」と名付けてお話をいたします。ではこれからナタンのお話を聞いてみることにいたしましょう。
 


 ぼくの名前はナタンて言うんだ。ぼくは、イスラエルのガリラヤ湖の北側にあるカペナウムの町に住んでいる。ぼくのお父さんは漁師なんだ。

 ここカペナウムの町では、イエス様はスゴイ人気があるんだよ。もう松坂君よりも人気があるんだ。(笑)イエス様が行くところはいつも人がいっぱいなんだよ。特に子供に人気があったんだ。なんでかって言うと、イエス様はえら〜い人なんだけど、偉ぶらないし、子供が集まってきても「何だぁこのガキ」なんて言わずに、おいでおいでと優しく頭に手を置いて「神様の恵があるように」ってお祈りして下さるんだ。だから僕たちはイエス様が大好きなんだ。

 ある日の朝早く12人のお弟子さんと舟にのってそうっと出かけようとするのを、漁師のゼパニヤおじさんが見ちゃったんだ。ゼパニヤおじさんが、「何処へいくんですか」ってペテロさんに聞いたんだけれど、「しー」っていうだけで何も教えてくれないんだ。

 そこでもう一回聞いたらね、「今日は悲しいことがあったから、みんなで静かな場所でお休みしたいんだ。」って。おじさんは「そうかなあ」って、そのまま見送ったんだけれど、舟を見た他の漁師が、「あれ、イエス様が向こう岸の方にいらしゃるぞ。」って叫んだもんだから、そのニュースが広がってね、町中の大人や子供がイエス様のいらっしゃる方角に、走ったり、歩いたりして追いかけ始めたんだ。


 それでぼくも隣のヨアシ君と「一緒に行こう。」って出かけようとしたら、お母さんが、「待ちなさいナタン!」って言うんだ。「きっと道が遠いからお弁当持っていきなさい。」ってね。

 でもぼくは、「でも、いいよお弁当なんか、他の皆は持たないで出かけたよ、ぼく遅れちゃうよ。」っていったんだけれど、お母さんは、「『でも』じゃありません、ちょっと待ちなさい。」っていうんだ。それで、昨日焼いたばかりの大麦のパンを5個入れてくれた。

 中身はこんな感じだったんだよ(実際にバスケットにパンを入れている)。ほら昨日焼いた大麦のパンが5つ入っているでしょう。実はぼくは大麦のパンは苦手なんだ。なぜって、大麦のパンは食べると何かごわごわしるし、ぼくは本当は知っているんだけど、大麦のパンは一番安い特売品みたいなパンなんだ。(笑)どうやら母さんはこれが一番栄養があるって信じているらしい。

 それから、小さな干した魚を二匹急いで焼いて、塩を振ってバスケットの中に入れてくれた。(本当は魚を焼いてきたんですけど、出かけるとき冷蔵庫に忘れてきてしまったので、急いで紙で作りました(大笑))。「パンを食べる時はこれをはさみなさい」って。「母さんこれ重いよ」っていったんだけれど、「おまえは良く食べるからこれくらい必要よ。」っていわれて、しょうがないからかついでいくことにしたんだ。このお弁当を持って大人の人たちを追いかけていったんだ。


 そして、2時間ぐらいかかって、ベツサイダと言うカペナウムの隣町の近くの淋しい山の真ん中まで行ったんだ。6キロ位はあるいたかなあ。そこでわかったンだけど、イエス様たちは今日は本当はそこでお休みにしたかったみたい。ゼパニヤおじさんが、「イエス様とお弟子は休みに行った。」っていうことが良く分かった。

 でもね、イエス様は、「今日はお休みの日だから、皆ごめんなさい、帰ってください。」なんて一つも言わないで、「そんなに神様のお話しが聞きたいんですか。」って嬉しそうな顔をしてお話しを始められたんだ。それが面白っくってね、みんな「それから、それから」って聞くもんだから、イエス様も時間を忘れてお話ししてくださってね。その間沢山の人が病気を治してもらったりしたんだ。


 気が付くとお日様が西へ傾きそうになった。その時みんなやっとおなかがすいたと思ったみたい。実はぼくもその時まで、どこかでお弁当を食べようと思っていたんだけれど、他の人達はお弁当を持っていないらしくてね。ぼく一人で食べるのも恥ずかしいし、皆に分けてあげるには大勢過ぎるし、僕は後ろの方にすわってじっとしていたんだ。

 その頃、イエス様の弟子のアンデレさんが、皆に声を掛けて尋ねているのが聞こえてきた。よーく聞いて見ると、「お弁当を持っている人はいませんか。」って聞いているんだね。ふつう野球場とかだと、「お弁当はいりませんか?」って聞きに来るけどその逆なんだよね(笑)。みんな首を横に振っていた。本当は持っていたのに、こんなお弁当じゃ恥ずかしいや、とか、こんなわずかのお弁当じゃどうにもならないって思った人もいたかもしれない。

 アンデレさんって、12弟子の中で一番優しそうな顔をしているから、ぼくは実はお気に入りだったんだよ。ぼくはっていうと、そのアンデレさんがぼくのほうまで近づいてきたんだし、こんな小さなお弁当でもイエス様に上げるんならばうれしいな、って思い始めたんだな。

 それで思い切って、「ハイ」って答えたんだ。そしたら、アンデレさんは僕を見て、それから母さんの作ってくれた大麦のパン5つと小さな焼き魚2匹のお弁当を見て、ちょっとがっかりした顔をしたんだ。でも大人だからね、「ボクありがとう、そのお弁当を持って、イエス様の所にきてくれる?」って聞くから、「うん、いいよ。」って言って、ついていったんだ。

 その時、イエス様の傍では、お弟子さん達がひそひそ話しをしてた。「先生。もうちょっと早く解散して下されば良かったんです。もう今度から会堂に時計を置いておきますからね。大体先生の話はいっつも長すぎるんです(大笑)。 これから歩いて家に帰ったら途中で暗くなって、お腹がすいて、皆しんでしまいますよ。」とか、「先生、パンを買ってこいっておっしゃいますが、20万円あったって、パンを買ってきても、これだけ大勢の人には、一人一口にもなりませんよ。」とか、皆深刻な顔をしているんだ。

 イエス様はっていうと、いつもの通り落ち着いていらっしゃって「だいじょうぶ、神様はいつも良いことしかなさらない。」っていいたそうな微笑みを浮かべていらっしゃるんだ。そこへ、ぼくの手を引っ張って行ったアンデレさんが近づいてこう言ったんだ、

 「先生、お弁当を持っている子供を見つけました。この子です。ナタンっていうんです。でもね」と声を落として「こんな大勢の人にたった5つの大麦パンと焼き魚2匹ではどうにもならないでしょうけれど。」って付け加えた。ぼくは皆からじっと見られて顔が真っ赤になったんだ。中には口に言わなくても、「なーんだ、あんなお弁当」って馬鹿にしたような顔もあった。

 でもイエス様だけは違ったんだ。「うん。 ボクは偉いぞ。自分一人でこそこそ食べないで、皆のために全部上げてしまうなんて。その心が気に入った。」っていうような感じで、ニコッとされたんだ。


 それからお弟子に向かって「さあ、食事にしましょう。人々を組み組みに分け、組毎に一列になって座るようにいいつけなさい。」とおっしゃった。弟子達は不思議そうな顔をしたけれども、イエス様の命令だから、直ぐに人々の間に入って行って、人々を整列させた。

 皆もお腹がすいていたから、すぐ従った。それよりもイエス様は何をなさろうとするのかと言った期待で、シーンとしてイエス様の手を見つめたんだ。

 イエス様は、ぼくのお弁当、そうお母さんの作ったあの弁当のかごからパンを出してそれを高く上げてお祈りを始めた。「私達の神、主よ。あなたは土の中から食べ物を生み出しなさる世界の王であられます。今日も日用のパンを与えて下さったことを感謝します。アーメン」

 そしてそのパンを二つに割った。驚いたことに、割られた二つとも大きさが同じなんだ(と言って実際にパンを二つに分け、カゴからもとの形のパンを二つ取り出す)。それを弟子達がまた二つに割った。それでも大きさは変わらないんだ(と言ってふたたびパンを二つに分け、カゴからもとの形のパンを二つ取り出す)。またそれを二つに割ったんだけど、また同じ形(と言ってまたまたパンを二つに分け、カゴからもとの形のパンを二つ取り出す)。(3つ目のパンを割ってから「これ以上聞かないで下さいね。これがわたしの限界ですから。」と主牧語る。(大笑))

 本当だよ。ぼくはそれを目の前で見たんだ。そのパンはどんどん人々の間に渡って行った。魚も同じだった。みんなお腹が一杯になるまでどんどん食べた。

 ぼくだって同じさ。イエス様に上げたのは5つのパンと2匹の魚だったけれど、ぼくはもっとたくさん食べたように思う。ぼくは一杯のお腹で元気が出て、真っ暗になった道だったけれど、他の大人の人の後について、長い道を家に帰った。

 からっぽのカゴを抱えてだったけれど「イエス様ってすばらしいな。」ってずうっと考えていたんだ。お母さんは心配していてね。寝ないで待っていてくれたんだ。「ただいま、お母さん。ぼくはすごく良い一日だったよ。お母さんのお弁当がたくさんたくさんの人に役だったんだ。お母さん有難う。」

 これで、ナタン君の話しはこれで終りです。



 ナタンは自分の食べ物を他の困った人たちにあげました。これはナタン君に愛があったからです。地球上には食べたくても食べ物がない子供たちがたくさんいます。死ぬまで一度もお腹いっぱい食べたことなく、死んでいく子もたくさんいます。お家のないストリートチルドレンもたくさんいます。私達だけたくさん食べていていいのでしょうか?

 そんなこと言ってどうしたらいいか判らないって?方法はたくさんあります。いろいろな方法で助けることができるんです。

 それから日本にはお腹がすいて困ってしまう人はそれほどいないかも知れないけど、心が空しくなっている人がたくさんいます。心の食べ物である神様のことばを知らないからです。そういう人たちにイエス様の話をしてあげられるといいでしょう。


 もう一つ勉強できるのは、ナタン君の信仰です。ナタン君が持っていたのは一番安いパンだったかも知れませんが、信仰を持ってそれをイエス様に使ってもらうと、すばらしい働きをするんです。

 「ぼくは頭が良くないから何にもできない」「体も弱いし何も役に立てない」なんていわないで、イエス様を信じて「イエス様、使って下さい」っていえば、大麦のパンのような私達を使ってイエス様はスゴイ働きをすることができるんです。


 さらに教えられることは、ちょっと難しいことばだけで「献身」っていうことです。これは、私達の持っている一番大切なものをイエス様に「どうぞ」って差し上げることです。

 では一番大切なものって何だろう。それはお弁当ではないかもしれない。何かのものというよりも、私達の心、私達の人生の全部のことなんです。

 「イエス様、私の命も心もあなたのものです。どうかこれを今日あなたにお返ししますから、どうか、あなたの喜んで下さるお仕事の為に使って下さい。」とお祈りして、自分をイエス様にお捧げしてください。


 最後に、デビッド・リビングストン注)と言う人の少年時代の話をしましょう。

 彼が少年時代、教会の集まりに出席していて献金の時間になりました。当時は献金をお盆で集めていたそうです。お盆をもった係の人がどんどん自分の方に近づいてきました。でも、ポケットをどう探しても、コイン一つ見つかりません。

 その内に係のおじさんが彼の所に来てしまいました。そしたらデビッド少年は言いました、「献金のお盆を下げて下さい。」。

 アッシャーは少し下げた。小さい子だからと思ったのでしょう。でも、デビッド少年はまた「もっと下げて下さい。」とお願いしたんです。不思議に思いながらも、アッシャーはもっと下げた。「もっとです。」とうとうお盆は床についてしまいました。

 そしてデビッド少年はそのお盆に乗って言いました、「僕はお金がないから、僕自身をお献げします。」と。彼はその後すばらしい宣教師 ・探検家注)になったのです。

 主が喜んで下さる捧げ物は、このようにわたしたち自身であることを覚えましょう。


注)David Livingstone

1813生-1873没 アフリカで活躍した英国の医療宣教師。探検家としても有名。1849年からアフリカの奥地を探検し始め,カラハリ砂漠を越えてヌガミ湖にまで進み,さらにザンベジ川上流を探検したのち1855年ビクトリア滝に到達した。1858年―1863年にも第二次の奥地探検を行う。1866年には、ナイル川水源の探索に出かけたがそれ以降消息不明になり、1871年捜索に向かったH.M.スタンリーによってタンガニーカ湖畔のウジジで無事を確認された。最後はバングウェウル湖南方のチタンボで病死。

(「マイペディア for Mac」(株)日立デジタル平凡社を参考に改変)


Editied and written by K. Ohta on 990504