礼拝メッセージの要約
(教会員のメモに見る説教の内容)


聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書(著作権・日本聖書刊行会)によります。

2001年8月12日(暫定版)

ヤコブ書連講(18)
「忍耐の学課」

竿代 照夫 牧師

ヤコブ書 5章1-12節

7こういうわけですから、兄弟たち。主が来られる時まで耐え忍びなさ い。見なさい。農夫は、大地の貴重な実りを、秋の雨や春の雨が降るまで、耐え忍ん で待っています。

8あなたがたも耐え忍びなさい。心を強くしなさい。主の来られ るのが近いからです。

9兄弟たち。互いにつぶやき合ってはいけません。さばかれ ないためです。見なさい。さばきの主が、戸口のところに立っておられます。

10苦 難と忍耐については、兄弟たち、主の御名によって語った預言者たちを模範にしなさ い。

11見なさい。耐え忍んだ人たちは幸いであると、私たちは考えます。あなたが たは、ヨブの忍耐のことを聞いています。また、主が彼になさったことの結末を見た のです。主は慈愛に富み、あわれみに満ちておられる方だということです。

12私の 兄弟たちよ。何よりもまず、誓わないようにしなさい。天をさしても地をさしても、 そのほかの何をさしてもです。ただ、『はい。』を『はい。』、『いいえ。』を  『いいえ。』としなさい。それは、あなたがたが、さばきに会わないためです。


はじめに

1.前回は、1ー6節から神を恐れない金持ちへ警告を学びました。

2.7−11節まではその続きで、金持ちに圧迫されている庶民がどんな態度を取る べきかを勧めている所です。

3.ここには6回も忍耐という言葉が出てきます。それをリストにしますと、

7節a:理由と目標=悪の支配、主の来臨
7節b:模範=農夫
8節:命令と理由=主の来臨
9節:態度=つぶやかぬこと
10節:模範=預言者
11節a:幸い=祝福の約束
11節b:模範=ヨブ

今日はこのテーマに沿って「忍耐の学課」を学んで見たいと思います。

A.忍耐とは?

1.忍耐という言葉

1)マクロトュミア(7,8,9,10節で使われている言葉のギリシャ語)は、マ クロ(長い)とトュモス(魂または霊)という二つの言葉の合成で、英語では long-sufferingと訳されています。「長い試練の下でも怒りなどに身を渡すことなく 魂を抑制し続けること」という意味です。

2)新約聖書では忍耐を示すもう一つのギリシャ語はヒッポモネーです。ここでは1 1節に2回出てきます。これは文字どおりには「下にあって留まる」ということです が「(神への信頼の故に)揺れ動かずに試練の下で留まる」という意味です。単なる 我慢、文句を言わない服従精神、耐久力とは違います。さてこの二つの言葉を比べる と、マクロトュミアの方は人に対するもの、ヒッポモネーは物事に対するものという 事が出来ます。

2.誤解を避けるために申し上げます。聖書の言っている忍耐は、

1)(やせ)我慢ではありません。痩せ我慢は、本来辛くて仕方がない状況の中で辛 くない振りをして演技することです。これは人間性の自然に逆らうものです。

2)隠忍自重でもありません。この言葉の裏には、恨みを隠していつかチャンスがあ れば仕返ししてやろうという復讐心が見え隠れしています。これもクリスチャン的ス ピリットではありません。

B.忍耐をする理由

1.主は悪しき人々を裁かれるから

神は横暴に振る舞っている悪しき人々への審判を実行されます。ですからそ の時を待ち、その希望の故に私達は忍耐しなければなりません。この場合の忍耐は人 間の側で復讐をしないという自制に表れる忍耐です。

2.その主は間もなく来られるから

ヤコブは、キリストの再臨を述べ伝えたり、証明したりという努力をしてい ません。これは、初代教会のメンバーにとっては、説明するまでもない当然の前提だ ったからです。キリストはもう戸口に立っておられます。それは悪しき人々を滅ぼ し、その全ての機構を永遠に破壊し、新しい統治機構を打ち立てるためです。ただそ の再臨も遅いように見えますが、神の遅延をも受け入れる忍耐が必要です。雨は遅く ても確実にやってくるように、主も又遅いように見えるけれど、必ず来たり給うので す。

3.大いなる祝福が約束されているから

「試みに耐える人は幸いです。」という言葉は多くの意味を含んでいます。

1)主の報い:第一にそれはマタイ5:10−12の思想を反映しています。「義の ために迫害されている者は幸いです。天の御国はその人のものだからです。わたしの ために、ののしられたり、迫害されたり、また、ありもしないことで悪口雑言を言わ れたりするとき、あなたがたは幸いです。喜びなさい。喜びおどりなさい。天におい てあなたがたの報いは大きいのだから。あなたがたより前に来た預言者たちも、その ように迫害されました。」

2)練られた品性:またローマ5:3−4には、「そればかりではなく、患難さえも 喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練 られた品性が希望を生み出すと知っているからです。」とあります。

3)永遠のいのち:またルカ21:19には、「あなたがたは、忍耐によって、自分 のいのちを勝ち取ることができます。」と素晴らしい約束が記されています。

C.忍耐の模範

1.農夫

「見なさい。農夫は、大地の貴重な実りを、秋の雨(10月の終わり頃にか けて徐々に来るので、農夫は大麦、小麦を計算して蒔くことが出来る。この時の雨は 夜、2,3時間降るというタイプで、3日ほど繰り返す。この雨は種まきと発芽、初 期の成長の為必要)や春の雨(3,4月で、そう重くはない。しかし小麦、大麦の穂 が満ち満ちて成熟する為に必要)が降るまで、耐え忍んで待って(期待をしながら) います。」

農夫がどんなに焦っても、成長期間を短くすることは出来ません。彼の出 来ることは、彼のベストを尽くして農作物成育の環境を整え、良き天候の為に祈り、 そしてゆっくりとした植物の成育を忍耐をもって待ち望むことです。

神はこの前の雨 と後の雨を申命記11:13,14で約束しておられます、「もし、私が、きょう、 あなたがたに命じる命令に、あなたがたがよく聞き従って、あなたがたの神、主を愛 し、心を尽くし、精神を尽くして仕えるなら、14 わたしは季節にしたがって、あ なたがたの地に雨、先の雨と後の雨を与えよう。あなたは、あなたの穀物と新しいぶ どう酒と油を集めよう。」と。

神は農夫として、私達の教会の成長を忍耐して待って おられます。私達も神の忍耐をもって、教会の成長とキリストの来臨を待つべきで す。

2.預言者
「10 苦難と忍耐については、兄弟たち、主の御名によって語った預言者た ちを模範にしなさい。」預言者達は神のメッセージの聞き手である同胞によって迫害 されましたがその迫害に耐えました。それは正しい裁き主にその全てのケースを委ね たからです。マタイ5:10−12に「義のために迫害されている者は幸いです。天 の御国はその人のものだからです。わたしのために、ののしられたり、迫害された り、また、ありもしないことで悪口雑言を言われたりするとき、あなたがたは幸いで す。喜びなさい。喜びおどりなさい。天においてあなたがたの報いは大きいのだか ら。あなたがたより前に来た預言者たちも、そのように迫害されました。」と記され ています。

特に預言者の名前が記されている訳ではありませんが、迫害された預言者 の筆頭は何と言ってもエレミヤでしょう。彼は「非愛国的」と見られた(しかし実は 真の愛国者であった)預言の為に、牢に入れられ、泥沼の中に入れられましたが、決 してその預言の姿勢を変えませんでした。

第二次大戦の最中、後の東大総長になった 矢内原先生は、「理想を失った日本の国は一度葬って、新たに出直して来なければ日 本の国は救われない」という演説が発端となって、経済学部教授を追放されました。 彼はその主張を曲げずに個人雑誌を続けていましたが、それを中止せよという警視庁 の命令に対して、「それじゃ止めますが、この雑誌を止めさせるならば日本の国は必 ず滅亡する」と言ったところ刑事がガタガタ震えてしまったというエピソードが残っ ています。何がその様な時代がまたぞろ訪れそうな感じが致します。祈らなければな りません。

3.ヨブ

3.ヨブは全ての持ち物を奪われ、子供を失い、健康を打たれました。妻か らも見捨てられ、その友からも苦しめられました。これらにも拘わらず、ヨブは神を 讃え、神のご計画に身を委ねました。主が彼になさったことの結末(直訳は、主の終 わり、または、主の目的)を見たのです。最終的には、神はヨブの所有物を数倍にし て返し、子供を与え、所有物を増殖させ、命を長らえさせ、あらゆる良き賜物を加え られました。でも、そうしたハッピーエンドだけではなく、そのプロセスを通して神 がヨブの信仰を練りなさったその目的が大切なのです。それこそがヨブの試練にかか わる神のご計画でしたが、サタンのそれは彼を絶望に導き、神を呪わせることでし た。神の目的が勝利したのです。

D.忍耐の秘訣

1.恵みによって心を強くすること(8節)

試練の中に埋没してしまわないで、主の恵を信じ、それによって自らを励ま すことを学びたいと思います。ダビデは戦いの最中で、心が乱れそうになった時、神 によって自らを励ましました(サムエル記第一30:6,「ダビデは非常に悩んだ。 民がみな、自分たちの息子、娘たちのことで心を悩まし、ダビデを石で打ち殺そうと 言いだしたからである。しかし、ダビデは彼の神、主によって奮い立った。」)。

2.呟いたり、いらいらしないこと

1)「9節 兄弟たち。互いにつぶやき合って(溜息、嘆きも含む。)はいけませ ん。さばかれないためです。見なさい。さばきの主が、戸口のところに立っておられ ます。」 仮に正当でない扱いを受けたとしても、復讐したり自己弁護を試みてはな りません。正しい裁き主なるキリストが門べに立っておられるからです。主にその裁 きを委ねなければなりません。もし私達が兄弟同士の欠点について呟い合うならば、 その呟きによって裁きを受けるでしょう。キリストは明らかに悪しき人々を裁くだけ ではなく、罪を犯す信仰者も裁きなさいます。他のどんな点で優れていたとしても、 人を裁き、他の人の欠点をあげつらうならば、神は悲しみなさるだけではなく、その 態度によって私達を裁きなさいます。

2)12節の誓いの禁止も9節との関連で考えられます。「私の兄弟たちよ。何より もまず、誓わないようにしなさい。天をさしても地をさしても、そのほかの何をさし てもです。ただ、『はい。』を『はい。』、『いいえ。』を 『いいえ。』としなさ い。それは、あなたがたが、さばきに会わないためです。」とは、試練のただ中で、 神の名を軽率に呼び、正しくない誓いをしてしまうことがありうるからです。忍耐の 内容には、言葉の真実さも含まれています。

3.神の恵みを全面的に確信すること

あなたがたは、主は慈愛に富み(ポリュスプラックノス カイ オイクティ ルモーン。ポリュ=多い、大きい。スプラックノス=腸が痛 む。)あわれみに満ちて(オイクティルモーン=情け深い)おられる方だ ということです。(前者は同情の一般的な質を指し、後者は特別なケースで呼び覚ま された同情のことで、他の人の痛みが自分の苦しみとなる感情を指します。)主がヨ ブに対して憐れみを示されたように私達にも大いなる憐れみをもって臨んでおられる ことを(単純と言われても)確信しましょう。


終りに

1.私達が直面している試練を避けることなく、主からのものとして受け取りましょ う。ヘブル10:36「あなたがたが神のみこころを行なって、約束のものを手に入れる ために必要なのは忍耐です。」

2.その試練を通してだけ与えられる忍耐の学課を汲み取りましょう。その忍耐は人 格の練成を生みますから。ヤコブ1:12「試練に耐える人は幸いです。耐え抜いて良し と認められた人は、神を愛する者に約束された、いのちの冠を受けるからです。」

3.試練を通り抜ける恵が豊かに備えられていることを確信し、主により頼みつつ忍 耐を働かせましょう。2コリント1:6「もし私たちが苦しみに会うなら、それはあなた がたの慰めと救いのためです。もし私たちが慰めを受けるなら、それもあなたがたの 慰めのためで、その慰めは、私たちが受けている苦難と同じ苦難に耐え抜く力をあな たがたに与えるのです。」


Message by T. Saoshiro, Edited by K. Ohta on Aug. 12th, 2001