礼拝メッセージの要約
(教会員のメモに見る説教の内容)
聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書(著作権・日本聖書刊行会)によります。
2003年11月30日
待降節第一講壇
「約束を覚えていてくださる主」
竿代 照夫 牧師
ルカの福音書1章67〜80節
中心聖句
73 われらの父アブラハムに誓われた誓いを覚えて、
(ルカ 1章 73節)
始めに:溢れる感謝
献堂式を栄光の内に越えて、クリスマスの季節に入りました。献堂式も大きな感謝、クリスマスも大きな感謝、本当に感謝で心がいっぱいです。その感謝の根底にあるのは、神の真実への感謝です。神は真実なお方、約束を守って下さるお方ということです。その神の真実を歌った歌の一つが、ザカリヤの賛歌です。
A.ザカリヤの賛歌とその背景
1.賛歌の前の出来事
1)先駆者ヨハネ誕生の知らせ
このザカリヤはキリストの先駆者であるヨハネの父として知られています。年老いたザカリヤが祭司としての努めを果たしている時、天使ガブリエルによって、自分に子供が与えられること、その子供がキリストの先駆者たるべきことを告げられます。
2)ザカリヤの不信仰と罰
しかし、かれはそれを信じることが出来ませんでした。その不信仰への罰として、口がきけなくなってしまいます。
3)ヨハネ誕生と赦し
10ヶ月後、男の子が誕生し、その子を「ヨハネ」と名付けました。ヨハネは「主の恵み」、ザカリヤは「主の記念」、エリサベツは「私の神の休息」という意味です。その命名の直後にザカリヤの舌が開かれ、今まで暖めてきた不信仰への反省と神の恵への感謝が爆発したのが彼の賛歌なのです。
2.そのテーマ:神の救い彼の賛歌のテーマは、神の救いでした。彼の子供ヨハネが神の大いなる救いの管として用いられること、その後に来るキリストを通して神の救いの到来する事をザカリヤは予見しました。その救いの内容は3つです。
1) 敵からの救い:イスラエル民族は、隷属状態から解放され、全人類はサタンによる罪の力への隷属状態から解放される。
2)恐れからの救い:様々な恐れの中でも最大である死の恐れから、十字架によってみな解放される。
3) 豊かな人生への救い:きよい心と正しい行い、喜びから来る奉仕、それらを可能とする力を与えて下さる。しかもそれは、私達の全生涯を通じてである。
今日特に目を留めたいのは、そのような素晴らしい出来事の背後に、神の真実さが顕れているという点です。ザカリヤは言います。
72 主はわれらの父祖たちにあわれみを施し、その聖なる契約を、
73 われらの父アブラハムに誓われた誓いを覚えて、
74-75 われらを敵の手から救い出し、われらの生涯のすべての日に、きよく、正しく、恐れなく、主の御前に仕えることを許される。
ではどのような約束なのでしょうか。それが、覚えられたと言うことはどういうことなのでしょうか。それがどう実現したのでしょうか。
B.神とアブラハムとの契約
70節は預言者達、72節は父祖達を通して与えられた神の約束について言及されています。これは、メシアに関する預言一般についてかたられています。つまり、堕罪の直後に蛇が砕かれるという預言、ユダ族に関するヤコブの預言、大予言者に関するモーセの預言、ダビデが自分をメシアの雛形として提示している預言、イザヤの処女降誕預言、ミカの誕生地預言、ゼカリヤのメシア預言、等々が含まれています。これらの数多くの預言が成就したのがクリスマスでした。今日はそうした多くの人々を通してなされた預言と言うよりもアブラハムを通してなされた約束、契約に焦点を絞ります。
1.契約の内容創世記を見ましょう。アブラハムへの神の約束は、その生涯で何回か繰り返され、或いは明確化されていきます。
1)一般的な祝福の約束
@個人の祝福
A大きな国民となる
B地の諸国民の祝福
Cパレスチナは彼と子孫のもの
D子孫は砂のように、星のように増加最初は12章で、<アブラハムは祝福される>、<大きな国民となる>、<地の諸国民が彼によって祝福される>、というものでした。
「 12:2 わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。3 あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される。」
次に、土地の約束です。パレスチナ地方は彼と彼の子孫のものという明確な約束が与えられます。
「 13:15 わたしは、あなたが見渡しているこの地全部を、永久にあなたとあなたの子孫とに与えよう。」
更に、彼の子孫を増加させるという約束になります。「 13:16 わたしは、あなたの子孫を地のちりのようにならせる。もし人が地のちりを数えることができれば、あなたの子孫をも数えることができよう。」「15:5 さあ、天を見上げなさい。星を数えることができるなら、それを数えなさい。・・・あなたの子孫はこのようになる。」
子孫は偉大な国民となり、神の民であり続ける。「 17:6 わたしは、あなたの子孫をおびただしくふやし、あなたを幾つかの国民とする。あなたから、王たちが出て来よう。7 わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に、そしてあなたの後のあなたの子孫との間に、代々にわたる永遠の契約として立てる。わたしがあなたの神、あなたの後の子孫の神となるためである。」
その子孫への約束は、イサクを通して出てくる子孫である。「 17:19 いや、あなたの妻サラが、あなたに男の子を産むのだ。あなたはその子をイサクと名づけなさい。わたしは彼とわたしの契約を立て、それを彼の後の子孫のために永遠の契約とする。」
2)その子孫から救い主が生まれる。
「 22:16 わたしは自分にかけて誓う。あなたが、このことをなし、あなたの子、あなたのひとり子を惜しまなかったから、17 わたしは確かにあなたを大いに祝福し、あなたの子孫を、空の星、海辺の砂のように数多く増し加えよう。そしてあなたの子孫は、その敵の門を勝ち取るであろう。18 あなたの子孫によって、地のすべての国々は祝福を受けるようになる。あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」
「あなたの子孫は、その敵の門をとる」とは、サタンの破壊的な行動に対するメシアの勝利を預言するものです。特に18節は単数です。他に13:15の子孫も単数です。これをパウロは、単数のキリストを指す預言と捉えています(ガラテヤ3:16「ところで、約束は、アブラハムとそのひとりの子孫に告げられました。神は「子孫たちに」と言って、多数をさすことはせず、ひとりをさして、「あなたの子孫に」と言っておられます。その方はキリストです。」)
3.契約の厳粛さ1)契約(ベリト=結合)
このように、神はアブラハムに対して一般的な祝福の約束と同時に、明確なメシアを与えるという約束をされました。それも、契約という形で。約束は破られることがありますが、契約とはもっと厳粛なものです。ベリト(結合)というヘブル語から来ているのですが、契約する当事者を結びつけることから来ています。
2)契約を結ぶ(切る)
面白いことに、契約を結ぶという動詞は多くの場合「切る」という言葉が使われます。これは契約を結ぶ場合に、その徴として動物が八つ裂きにされることから来ています。契約を破るものは、このように八つ裂きにされるという厳粛さを指します。
3)その契約は遵守される
ですから、イスラエル人は契約をとても大切に考えました。それが災いをもたらす結果になろうとも、契約は契約で守ったのです。どちらかといえば日本人は契約にルーズというか大らかです。守らなくてもそんなに深くは追求されませんし、追求もしません。まあ良いじゃないか、という寛容さが長所でもあり、でも時によっては大きな弱点でもあります。
C.契約の遵守
1.忘れられたのではと思われる状況
ザカリヤに話を戻します。彼はアブラハムから約2千年後に生きた人です。2千年も経った古証文を振りかざすには、余りにも悲しい現実の中に生きていました。自分の国は外国によって占領され、支配されていました。何度か立ち上がった独立運動も、圧倒的な外国勢力で弾圧されてしまいました。経済的には貧しく、信仰的にも衰え、道徳的にも退廃の様子が忍び寄ってきました。民族の祖先であるアブラハムに与えられた約束は、聖書という古い本の中には記されているけれども、それが今の苦しみを救う力になるだろうか、ザカリヤは本当に苦しんでいたと思います。
2.約束を待ち望む人々ザカリヤの時代は、こんなに苦しい時代でしたが、実はそれが民衆の間には強いメシア待望となって渦巻いていたのです。他に何の希望もないそんな暗い時代だからこそ、今メシアが来て欲しいという期待感がずーっと高まっていました。その為の特別な祈りのグループがエルサレムの神殿内に生まれ、アンナとかシメオンという人々は自分の目の黒い内にメシアが現れるという御告げ迄受けていました。ザカリヤがそれを知らないはずはありません。彼もメシア待望祈祷会の忠実なメンバーであったことは想像に難くありません。
3.約束は成就された!1)先駆者ヨハネの誕生
長い話を省略して結論だけ申し上げましょう。遂にそのメシアが到来する、その先駆者は他ならぬ自分の子供のヨハネだ、と示されたのです。こんなにびっくりすることが他にあるでしょうか。ザカリヤは自分の身に起きた奇跡、年老いた夫婦に子供が与えられた、その子供こそ、メシアの先駆けの使命を果たす人物だと示されたとき、俄然「ああ、神はご真実な方だ。あのアブラハムへのお約束を覚えていて下さった。」と実感したのです。
2)救い主の誕生
ザカリヤは、ヨハネの誕生は神の約束の成就の序曲に過ぎず、本番は次なるお方の誕生、つまりイエスの誕生、彼によってもたらされる人類への救いという大きなスケールでこの出来事を眺めていました。今や、朝日が天から指してきた、と感じたのです。朝日は普通水平方向から来る物ですが、ザカリヤにとっては天から指してきたように思えました。暗きに住むもの、死の陰に座して希望を失っている者に大きな光が与えられたのです。これに興奮しなくて、何に興奮したら良いのでしょうか。
終わりに
1.神は憐れみに富んでおられる
主は私達にも恵の約束をしていて下さっています。例えば、「私たちすべてのために、ご自分の御子をさえ惜しまずに死に渡された方が、どうして、御子といっしょにすべてのものを、私たちに恵んでくださらないことがありましょう。」(ローマ8:32)との聖言を信じ切って進もうではありませんか。
2.神は誠実なお方神は約束を破る方ではありません。どんなに不可能と思われても、それを成し遂げる力と、忍耐力をともっておられます。
2年前を思い出して下さい。私達も不可能と思われることに囲まれていました。会堂の土地獲得、会堂建設と人間的に考えれば気違いになりそうなほどの課題と戦っていました。主はこの海を二つにするとの聖言を与え、その聖言の通りに進めて下さいました。
家族の救い、経済的不況の中でのサバイバルなどどれ一つとっても容易な問題ではありません。神は契約を覚え給う、この事実に依り頼み、平安をもって日々を過ごさせていただきたいものです。
3.神の憐れみと誠実に信頼を!中には、あまり昔の約束で忘れられたのではと思ってしまうものもあるかも知れません。でも、2千年の長きに亘る約束が、遂に成就することもあるのです。気を長く持ちましょう。
神は私達を決して忘れなさいません。その契約を覚えて実行して下さるお方です。神の憐れみと誠実さとを信頼すると、現実の様々な複雑な課題をも大きな心を持って乗り越えられます。勝利の一週間を祈りましょう。
Written by I. Saoshiro and Edited by N. Sakakibara on 2003.11.30