礼拝メッセージの要約
(教会員のメモに見る説教の内容)

 
聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書(著作権・日本聖書刊行会)によります。
 
2008年11月9日
 
「天幕の場所を広げよ」
イザヤのメッセージ(39)
 
竿代 照夫牧師
 
イザヤ書54章1−10節
 
 
[中心聖句]
 
  2   あなたの天幕の場所を広げ、あなたの住まいの幕を惜しみなく張り伸ばし、綱を長くし、鉄のくいを強固にせよ。
(イザヤ書54章2節)

 
聖書テキスト
 
 
1 「子を産まない不妊の女よ。喜び歌え。産みの苦しみを知らない女よ。喜びの歌声をあげて叫べ。夫に捨てられた女の子どもは、夫のある女の子どもよりも多いからだ」と主は仰せられる。2 「あなたの天幕の場所を広げ、あなたの住まいの幕を惜しみなく張り伸ばし、綱を長くし、鉄のくいを強固にせよ。3 あなたは右と左にふえ広がり、あなたの子孫は、国々を所有し、荒れ果てた町々を人の住む所とするからだ。4 恐れるな。あなたは恥を見ない。恥じるな。あなたははずかしめを受けないから。あなたは自分の若かったころの恥を忘れ、やもめ時代のそしりを、もう思い出さない。5 あなたの夫はあなたを造った者、その名は万軍の主。あなたの贖い主は、イスラエルの聖なる方で、全地の神と呼ばれている。6 主は、あなたを、夫に捨てられた、心に悲しみのある女と呼んだが、若い時の妻をどうして見捨てられようか」とあなたの神は仰せられる。7 「わたしはほんのしばらくの間、あなたを見捨てたが、大きなあわれみをもって、あなたを集める。8 怒りがあふれて、ほんのしばらく、わたしの顔をあなたから隠したが、永遠に変わらぬ愛をもって、あなたをあわれむ」とあなたを贖う主は仰せられる。9 「このことは、わたしにとっては、ノアの日のようだ。わたしは、ノアの洪水をもう地上に送らないと誓ったが、そのように、あなたを怒らず、あなたを責めないとわたしは誓う。10 たとい山々が移り、丘が動いても、わたしの変わらぬ愛はあなたから移らず、わたしの平和の契約は動かない」とあなたをあわれむ主は仰せられる。
 
1.宣教聖日と今日のテキスト
 
 
今日は「宣教聖日」です。宣教のために世界各地に散って戦っている宣教師方のために特に祈る日です。丁度おり良く、私達のイザヤ書の学びがそれと符合して、54章に差し掛かりました。2節は、後ほど述べますが、近代宣教の父、ウィリアム・カーレイが宣教のための歴史的説教のテキストとして選んだ場所です。2節に焦点を絞りますが、その前に、54章の位置づけを見てみましょう。
 
2.54章の位置づけ
 
 
・イザヤ52:13−53:12の「しもべの歌」で、人類のすべての罪の贖いが預言されました。この54章は、その贖いの結果として、イスラエルの回復が預言されます。特に53:10−11には、メシアの受難は多くの霊的子孫を生み出すことが預言されていました。

・その多くの子を受け入れるインフラを整備しなさい、というのがこの54章です。
 
3.「妻」としてのイスラエル
 
 
・アブラハムの妻サラのイメージ:
この章でイスラエルは、主である神の「妻」として描かれています。1節に「不妊の女性が多くの子どもを産む」と記されていますが、これは、アブラハムの妻サラが、長い間不妊であり、侍女のハガルにあざ笑われていたところに、主がその恥を回復し、多くの子どもの母となさったことを背景としています。強い絆、大きな愛がその根底です。罪が除かれ、主とその民との隔てが除かれると、そこに交わりと喜びが生まれるのです。

・急激な人口増への備え:テントの拡大(イラスト@):
今日のテーマである「あなたの天幕の場所を広げ、あなたの住まいの幕を惜しみなく張り伸ばし・・・」という命令は、妻として譬えられているイスラエルのイメージの続きです。妻の仕事はその住まいであるテントを維持・管理することです。彼女の場合、子どもが多くなるから、テントを拡大しなさいというのが、この文脈です。具体的に言いますと、回復した民族の急激な人口増加に対して備えなさいという命令なのです。「ふえ広がり」という言葉は、人口の爆発的な増加を示す言葉です。

 
4.信仰の行為
 
 
・将来を見越してのインフラ整備:
テントを広げることは信仰の行為です。この妻(つまり、イスラエル)は、現状においては淋しく乏しい状態であるが、やがて来る増殖を信じて、予めテントを大きくしなさい、と勧められるのです。当時の習慣では、妻たるものが一つのテントを与えられており、その子どもが沢山になるとテントを大きくしたという事情がありました。ですから、子供が生まれることを予想してテントを大きくというのは、1節のイメージと繋がっているのです。

・テント生活のイメージ:
イザヤの時代は、アブラハムの時代と異なり、テント住まいの習慣は少なくなりましたが、ことさらにアブラハム時代のイメージで命令されているのです。どの家もそうですが、人が殖えてから慌ててつぎはぎの増築をしますと、実にみっともない、しかも使い勝手の悪い家となります。ホテルなどでも、いかにも増築を重ねたなあというようなものがあります。休館と新館の間に段差があったり、壁の色が違っていたり、階段が複雑で、かくれんぼには楽しいが、火事があったら危険この上もありません。イスラエルの民は、神の約束成就を信じて、予めテントのための場所を広く取って置くように命じられました。私達も、主のお働きに携わる時、必要なのはこの信仰です。会堂が出来て丁度5年となりますが、本当にあの時期に、この場所で、あの方法でなされて良かったと実感します。それも、私達が先を計算して計ったというよりも、一歩ずつ、主の導きに従っただけであります。
 
5.大きな幻をもつ
 
 
・将来計画を持つ大切さ:
信仰の行為のために必要なのは、ビジョンの大きさです。実業の世界でも、先の見通しを怠って、その日その日の仕事だけに没頭する企業は取り残されます。まして、神の干渉を信じる信仰者は尚一層「神によって大きなことを計画」すべきです。「あなたの住まいの幕を惜しみなく張り伸ばす」べきです。人間の常識で、神の業に制限を加えてはなりません。私達が手にしているあらゆる資源を、主のみ業のために投入すべきでありましょう。

・「教会の広がり」に関して:
この部分にウェスレアン注解は、次のコメントを加えています。「今日の教会に当てはめてみると、愛の綱を長くし、目的の杭を強固にせよ、という呼びかけである。教会は、閉鎖的な社会のための私的な礼拝堂になってはならないのである。・・・教会は、福音伝道によって発展するものである。福音伝道は、教会の子どもたちを救霊者とする。」と。来年度計画を立てている私達への励ましとして捕らえたいと思います。正直に言いまして、一昨日の会議では、緊縮財政が打ち出されました。私は、それはそれでよいと思っています。世界経済が危機的な状況にある現在、財政的な拡大路線は取れません。しかし、伝道の意欲と計画だけは、拡大をしたいと思いますし、それは多額のお金要しない方法で可能と信じます。この教会が、外に向かって開かれた教会、福音を皆で伝えようという積極的な教会であり続けたいと思います。私達一人一人の信仰生活の面でも、「天幕の場所を広げる」余地はないでしょうか。家族伝道・職場伝道・お友達伝道の面で、主は天幕を広げなさいと語っておられるように思います。
 
6.堅実な基礎も大切
 
 
・拡大に伴う基礎の補強:
天幕が広がるだけ広がって、杭が弱いままであったら、その天幕は危険です。「綱を長くし、鉄のくいを強固にせよ。」と語られているのは、相応しい命令です。大きさに伴う強固なくいがしっかりと打ち込まれねばなりません。私が神学生の頃、天幕を担いで浜田で開拓伝道を行いました。天幕で寝泊りし、夕方はそれを伝道会の会場にするという仕組みです。伝道が進み、魂が救われ、働きが順調に進んでいる真最中に、台風がやってきました。勿論天気予報で知らされていましたから、私達は杭を二重にし、綱も二重にし、しかもそれに石を括りつけて台風の襲来を待ちました。風が一番強い時には、神学生がみんなテントにぶら下がって守りました。

・私達の「信仰生活」の基礎は?:
戦争でもそうです。徒に戦線を広げるだけで、補給路を強くしなければ負けてしまいます。基礎が大切という真理は、私達の信仰生活にも当てはまります。活動が多くて、その背後にある御言の学び、デボーション、祈りの生活、集会出席がおろそかになったとすれば、その活動は死滅してしまいます。
 
7.ウィリアム・カーレイの「歴史的説教」
 
 
・靴屋兼伝道者の幻と祈り(イラストA):
イギリスの靴屋兼伝道者であったウィリアム・カーレイは、靴屋の仕事場に世界地図を広げ世界宣教のために祈っていました。

・1792年の説教(イザヤ54:2-3):
1792年、カーレイは、バプテスト派の牧師会で、このイザヤ54:2-3に基づき、「神から大きなことを期待せよ、神のために大きなことを計画せよ」“Expect great things from God; Attempt great things for God.”と語りました。そして、福音を聞いたことのない世界の隅々に福音を伝えるための宣教師を送ろう、と提案しました。多くの人はカーレイをあざ笑いました。

・説教を自ら実践:
しかし、カーレイに同調した人々によってバプテスト宣教会が組織され、宣教師第一号としてカーレイ自身がインドに行きました。彼は、途中で一度も本国に戻ることなく、インドの土となりました。彼が出かけるとき、見送りに来てくれた人々にこういいました。「私はこれから、ダイヤモンドの鉱山の穴にダイヤを掘りに出かけていきます。後に残る皆さんは、私を支える命綱をしっかり握っていてください。」と。
 
8.大きなビジョンと堅実なサポート
 
 
・教会として、教団として大きなビジョンを持とう:
今日は宣教聖日です。ウィリアム・カーレイの持っていたビジョンに倣って、私達も神のために大きな宣教のビジョンをもち、その実現のために、神から大きな事を期待しましょう。海外の宣教師を送る手を休めずに、主許し給うならば、もっと拡大をしたいと思います。さらに、教団規模だけでなく、私達の教会の伝道においても、テントを拡大しましょう。ありとあらゆる方法を用いて、一人の魂の救いのために労し、祈りましょう。

・堅実なサポートを継続しよう:
また、外に出かけていく宣教師を支える務めを全うしましょう。祈りとサポートをもって、また、折々のお手紙と愛の贈り物を持って、また、許される機会に彼らを訪問することによって。これから、宣教師達のための祈りを捧げます。皆さんで力を籠めて祈りましょう。日ごとのとりなしの中でも、彼らを覚えて祈りましょう。