礼拝メッセージ
(インマヌエル中目黒キリスト教会)

 
聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書第三版(著作権・新日本聖書刊行会)によります。
 
2011年3月13日
 
「聖別して、取りつけた」
ネヘミヤ記連講(6)
 
竿代 照夫 牧師
 
ネヘミヤ記3章1-12節
 
 
[中心聖句]
 
  1   こうして、大祭司エルヤシブは、その兄弟の祭司たちと、羊の門の再建に取りかかった。彼らはそれを聖別して、とびらを取りつけた。彼らはメアのやぐらまで聖別し、ハナヌエルのやぐらにまで及んだ。
(ネヘミヤ記3章1節)


 
聖書テキスト
 
 
1 こうして、大祭司エルヤシブは、その兄弟の祭司たちと、羊の門の再建に取りかかった。彼らはそれを聖別して、とびらを取りつけた。彼らはメアのやぐらまで聖別し、ハナヌエルのやぐらにまで及んだ。2 彼の次にエリコの人々が建て、その次にイムリの子ザクルが建てた。
3 魚の門はセナアの子らが建てた。彼らは梁を置き、とびら、かんぬき、横木を取りつけた。4 彼らの次に、コツの子ウリヤの子であるメレモテが修理し、その次に、メシェザブエルの子ベレクヤの子であるメシュラムが修理し、その次に、バアナの子ツァドクが修理した。5 その次に、テコア人たちが修理したが、そのすぐれた人たちは彼らの主人たちの工事に協力しなかった。
6 エシャナの門はパセアハの子エホヤダと、ベソデヤの子メシュラムが修理した。彼らは梁を置き、とびら、かんぬき、横木を取りつけた。7 彼らの次に、ギブオン人メラテヤと、メロノテ人ヤドン、それに川向こうの総督の管轄に属するギブオンとミツパの人々が修理した。8 その次に、金細工人のハルハヤの子ウジエルが修理し、その次に、香料作りのひとりハナヌヤが修理した。こうして、彼らはエルサレムを、広い城壁のところまで修復した。9 彼らの次に、エルサレム地区の半区の長、フルの子レファヤが修理した。10 その次に、ハルマフの子エダヤが自分の家に面する所を修理し、その次に、ハシャブネヤの子ハトシュが修理した。11 ハリムの子マルキヤと、パハテ・モアブの子ハシュブは、その続きの部分と炉のやぐらを修理した。12 その次に、エルサレムの残りの半区の長、ロヘシュの子シャルムが、自分の娘たちといっしょに修理した。
 
はじめに
 
 
昨週は、エルサレムの再建の使命を帯びてペルシャから戻ったネヘミヤに反対をした人々の存在とそれに立ち向かったネヘミヤのスピリットを学びました。今日は工事が始まった詳細の記録である3章に入ります。
 
A.仕事の割り当て
 
 
3章は、城壁再建の割り当て表です。二千四百年後の私たちには何の意味もない無味乾燥なカタカナの羅列のように思われますが、詳しく学んで行きますと、沢山のレッスンを拾うことが出来ます。
 
1.緻密で包括的(工事割り当て地図参照)
 
 
工事の範囲は(当然のことながら)エルサレムの町をぐるりと囲むもので、どこも欠けたところはなかったということです。1節の羊門から、地図を辿ると時計回りに一周しているのが分かります。要は、計画が包括的で、穴がなかったと言うことです。もし、一箇所でも穴があれば、他の工事が水泡に帰してしまいます。

主の働きにもこれは当て嵌まります。私たちは皆それぞれ守備位置が与えられていますが、私一人くらい手を抜こうと思いますと、そこが重大な敗北の原因になってしまいます。このリストを作ったネヘミヤは正に組織作りの名人であると感心させられます。注解書の一つに「ネヘミヤはexcellent organizerだ」と評しているのがありました。その点では、ジョン・ウェスレーもメソジスト運動をとても良く組織化した指導者であったと感心させられます。すべての人がこの賜物を与えられている訳ではありませんが、主のお働きは、このような秩序正しさをもって行われるべきことを示しているように思います。
 
2.全員が参加
 
 
3章に出てくる人名やグループ名は40以上です。実働人数はその100倍はあったと思われます。興味深いことが幾つかあります。

・大祭司も:
1節の大祭司エルヤシブとは、90年ほど前神殿建築に当たった大祭司ヨシュアの孫(12:10)です。立場から言うと、下働きで手を汚さないような偉い人です。でもその大祭司も労働に加わりました。尤もこのエルヤシブ、後にトビヤとつるんで怪しいことを行うのですが・・・。

・筋肉マンでない人々:
8節では「金細工人、香料作り」が、また、31節では「金細工人、宮に仕える僕たち、商人」も工事に入っていました。筋肉労働者ではない人々です。

・女性:
12節には、「区長の娘たち」が入っていたと記されています。たおやかな女性も加わったのです。

・工事に加わらない人もいた:
5節の「テコア人たちが修理したが、そのすぐれた人たちは彼らの主人たちの工事に協力しなかった。」と言うことばは意味深長です。文字通りには、「彼らは自分達の首を指導者達の働きに突っ込まなかった。」です。皆が重荷を負っているときに、すっと肩を外す人々です。このことから読み取れるのは、全員が嫌でも応でも強制労働させられた訳ではないということです。ネヘミヤは皆にお願いはしましたが、参加するかしないかはその人に任せました。それにしても、5節の「すぐれた」ということば(「貴族」とも訳せる)には皮肉が籠められています。彼らは余りにも気位が高くて、手を汚す仕事、力仕事をするには加われなかったのでしょう。彼らには罰金が課せられてもいませんし、呪われてもいません。ただ、ネヘミヤは「協力しなかった」(悲しいね)と記しただけです。後は主ご自身が裁きなさるでしょう。人間が、「あいつはサボっているからしょうがない」などと怠けている人を裁く必要は無いのです。でも、この人々の存在は2千年以上も記録されてしまいましたね。
 
3.「自分の家の前」が基本
 
 
10節に「ハルマフの子エダヤが自分の家に面する所を修理し」とあります。23,28,29,30の各節にも同様の記述があります。担当割り当ての基本は自分の家の前の城壁です。これは、当たり前といえば当たり前です。町の清掃をするときに、自分の家の前の道路、そして向こう三軒両隣という割り当てをするのと似ています。工事のときも、取り掛かりやすく、工事中でも家に戻って一休みできます。完成した後で、敵が攻めてきた場合を考えると、自分の家の前の壁が丈夫と言うことは安心です。仮に、壁がいい加減でしたら、真っ先にやられてしまいますからね。実にこれは理に適った配分です。同時に、自分が住んでいないところを割り当てられた人もいます。全体としての調和を考えてのことでしょう。これも理に適っています。
 
4.周辺地域の人々も協力(エルサレム周辺地図参照)
 
 

工事に携わったのは、エルサレム住民だけではありません。周辺の小さな町、村の人々も協力しました。2節はエリコ、5節ではテコア、7節はキブオン、メロノテ、ミツパ、13節ではハヌン、ザヌアハなどの住民が記されています。エルサレム周辺地図を見れば分かるように、周辺地域の人が城壁工事に協力しました。エルサレムの重要性を理解していたからです。彼らの一部分は、城壁完成後エルサレムに移住しました。
 
B.労働のスピリット
 
 
彼らはどんな気持ちでこの工事に取組んだことでしょう。
 
1.迅速さ
 
 
この記述を見る限り、工事は2章の会合の直ぐ後に始まったようです。つまり、時間を置けば置くほど邪魔が入り、完成が危うくなる恐れがありました。皆で座って計画を立て、予算を見積もり、割り当て会議を開くという悠長なことでは物事が進みません。鉄は熱いうちに打たねばなりません。いずれにせよ、皆が力を籠めて工事に携わったお蔭で、工事は著しく進捗しました。6:15を見ると、僅か52日で完成したと記されています。驚くべきスピードです。木下藤吉郎が三日間で墨俣城を建てたという伝説的物語がありますが、それに勝るとも劣らない快挙です。
 
2.主を恐れつつ
 
 
1節に2度出てくる「聖別して」という言葉に注目してください。それが祭司であったこともあるのでしょうが、門が出来上がったとき、それを聖別したのです。「聖別」とは、神のお仕事のために取り分けておくという意味です。一般の人々が出入りする門をどうして「聖別」しなければならなかったのでしょう。それは、この都そのものが単なる政治的首都、軍事的要塞ではなく、聖なる都であり、礼拝を捧げる神殿を中心とした町だったからです。しかも「羊門」というのは、いけにえのための羊が神殿に送られる通路だったそうです。エルサレムはイスラエル信仰の中心でした。この奉献式はそのような意味を持っていました。したがって工事をする人々も、単なる土木工事としてではなく、神を畏れつつ行ったことが分かります。
 
3.熱心に
 
 
20節には、「熱心に」という形容詞が加えられています。他の人々が不熱心であったと言うのではなく、ザカイの子バルクが特別に力を籠めて仕事をしたのでしょう。この部分がとても難しい場所だったからかもしれません。難工事を一生懸命工夫しながら行ったことでしょう。
 
4.ボランティアとして
 
 
この人々は労働の報酬を受け取っていなかったようです。ネヘミヤ自身も、この期間総督としての給料を受け取らずに働きました(5:14)。このようなクリーンスピリット、クリーンハンドが主の働きを麗しくします。
 
終わりに
 
 
・すべての働きを聖別する:
私たちが主のために働く業は、どんなに大きくても小さくても、また、直接主の働きに見えないような「世俗的な」仕事であったとしても、それを「聖別して」、つまり、主の業であると意識して行うべきです。神学院にいた頃、水道工事を申し出たSさんという方がいました。私たち神学生も手伝ってビニールパイプを繋いでいったのですが、パイプとパイプを繋ぐたびに、繋ぎ目に暫く手を置いて「主よ、この繋ぎ目を祝してください」と祈ってから、次のパイプに移っていくのです。とても教えられました。

・教会にかかわる働きは特に:
特に直接教会に関わる働きは、世俗的なスピリットややり口でなく、祈り深く、主のみこころを弁えつつ行うべきです。主の助けを頂きましょう。

・教会建設にみんなの協力を:
今日はスモールグループの再編成の案内がなされました。中目黒教会が城壁工事のような麗しさをもって建設されるために祈り、協力しましょう。
 
お祈りを致します。