工事総監督であったネヘミヤは、まず祈り、祈りを通して与えられた知恵を用いて自衛的手段を取りながら工事を続行するという手段を講じました。その詳しいシステムが描かれているのが16−23節です。その要点を纏めると下記のようになります。 |
@ネヘミヤ直属の部下を活用
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・半分は警備隊(16節a): ネヘミヤ総督には直属の部下がいました。その部下も、半分を警備に、残り半分を仕事にと割り当てました。 |
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・半分は応援隊(16節b): 工事人は、原則として自分の家の近くを割り当てられたシロウト集団でしたから、プロの官僚が応援することに大きな意義があったことと思います。 |
・ラッパ手(18節b−20節): 城壁はエルサレムの町全体をカバーしていましたから、お互いの連絡が疎となってしまう危険がありました。そこで、ラッパ手を置いて、非常時に備えたのです。多分、ラッパの鳴らし方で方角を定めたのかもしれません。緊急事態への対応が出来ていたのです。 |
A区長たちにも防衛責任を負わせる(16節c)
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・16節に「隊長たちはユダの全家を守った。」とありますが、この「隊長たち」と3:9、12などの「区長たち」と同じ言葉です。区長たちに、工事責任だけではなく、防衛の責任も負わせたのです。 |
B工事人も武装する
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・運搬係は、槍を片手に(17節): この場合の材料とは、瓦礫の中から使えそうな石を拾い集めることであったと思われます。 |
・石積係は、帯剣で(18節a): 石を切る仕事、石を積む仕事は両手でしなければなりませんから、とても片手に槍という訳には行かなかったことでしょう。ですから、短めの剣を腰にしっかりと差して工事を続けたものと思われます。 |
C突貫工事の継続
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・日の出から星の出まで休憩なし(21節)(イラストA): 工事は朝日が出始める明け方から、手元が見えなくなる夜までぶっ続けで行われました。ともかく完成を急いだのです。 |
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・外泊なし(22節): エルサレム郊外から働きに来ていた人々は、当然夜は仕事を終えて家に帰っていたのですが、この危機がおきてからは、家に帰らず、雑魚寝をしながらこの期間を過ごしました。三つの理由があります。一つは、夜襲があった場合に城内に人が大勢いることで逸早く対応できること、もう一つは、郊外の行き帰りに時間が掛かり、特に夜遅く帰るときに襲われる危険があったこと、さらに人々の往復に紛れて、敵も入り込んでくる危険があったこと、です。賢い選択と行動でありました。 |
・着替えもなし(23節): この目的は当然、夜襲に備えるためでした。夜襲があった場合、直ぐに武器を持って戦うことが出来るように、着物を着たまま寝ていたのです。ちょうど消防士さんが当直の時に119番がなったら直ぐ出動できる態勢で寝るのと似ています。まあ、僅かの期間ですから我慢が出来たと思いますが、シャワーも浴びるチャンスもなく働き続けですから、お互い臭かったことでしょうね。完成が間近でしたから、このような態勢が可能だったのでしょう。 |
<この知恵は教会にも、社会一般にも適用される> |
こうした施策を考え、直ぐ実行すると言うのは、驚くべき知恵・組織力・実行力です。ネヘミヤという男の実務的知恵、指導力、そしてその背後にある祈り・敬虔に驚かされます。現代も複雑な組織の中で社会が動いているわけですが、ネヘミヤのやり方を真似できないまでも、その基本にある敬虔さに基づく実際的な行動力は、クリスチャン・ビジネスマン、オフィスマン、オフィスレディ、主婦、学生などなども、しっかり学ばねばなりません。当然のことながら教会というコミュニティの建設に携わる私たち一人ひとりも、ネヘミヤの精神と行動力を学ばねばと思います。 |