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聖書テキスト |
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1 ヨシュアは年を重ねて老人になった。主は彼に仰せられた。「あなたは年を重ね、老人になったが、まだ占領すべき地がたくさん残っている。 |
2 その残っている地は次のとおりである。ペリシテ人の全地域、ゲシュル人の全土、 3 エジプトの東のシホルから、北方のカナン人のものとみなされているエクロンの国境まで、ペリシテ人の五人の領主、ガザ人、アシュドデ人、アシュケロン人、ガテ人、エクロン人の地、それに南のアビム人の地、4 カナン人の全土、シドン人のメアラからエモリ人の国境のアフェクまでの地。5 また、ヘルモン山のふもとのバアル・ガドから、レボ・ハマテまでのゲバル人の地、およびレバノンの東側全部。6 レバノンからミスレフォテ・マイムまでの山地のすべての住民、すなわちシドン人の全部。わたしは彼らをイスラエル人の前から追い払おう。わたしが命じたとおりに、ただあなたはその地をイスラエルに相続地としてくじで分けよ。7 今、あなたはこの地を、九つの部族と、マナセの半部族とに、相続地として割り当てよ。」 |
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はじめに |
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今年の愛老聖日によくお出でくださいました。普段出席が困難な方々も加えて、この日を祝うことが出来るのは、大きな喜びです。 |
さて、今日は、老年になって「あなたは年を重ね、老人になったが、まだ占領すべき地がたくさん残っている。」と、新しい使命を与えられたヨシュアについてお話ししたいと思います。 |
この御言に踏み込む前に、ヨシュアの生涯をざっと振り返りたいと思います。 |
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A.ヨシュアの生涯 |
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1.出エジプト前 |
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ヨシュアは、エフライム族のリーダーの家系から生まれたこと以外は何も知られていません。出エジプト直後の記事で、「若者」(出33:11)と言われていますから、出エジプト時には30歳くらいと考えられます。 |
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2.出エジプト直後 |
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・モーセに選ばれて従者となり、アマレクとの戦いに際しては大将としてイスラエルの指揮に当たりました(出17:9)。 |
・モーセが十戒をいただくためにシナイ山に登ったとき、従者として共に登山しました(出24:13)。 |
・カデシュバルネアで、カナン偵察隊が遣わされたとき、ヨシュアはその12人の一人でした。そして、カレブと共に信仰的な報告をし、不信仰的な報告を行った10人と対立しました。その時、カレブとヨシュアのみがカナン入国を約束され、他の成人たちは皆、荒野の40年間で死に絶えることが宣告されました(民14:30)。 |
・民の中で自由に預言した者をモーセに訴えて秩序を維持しようとしました(民11:28)。 |
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3.カナン入国直前 |
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・モーセによって後継者に任命されました(民27:18、申命記31:7)。この時70歳くらいであったと思われます。 |
・ヨルダン渡河を敢行し、後継者としての威信を確立しました(ヨシュア4:14)。 |
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4.カナン入国以後 |
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・エリコを攻略しました(6章)。 ・カナン南部同盟軍を打ち破りました(10章) ・カナン北部同盟軍を破りました(11章) ・ヨルダン川の東を占領しました(12章) ・残りの土地を占領し、分配しました(13−21章)(地図参照) |
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5.告別と死 |
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・告別の説教(23−24章):若い世代に対して、信仰に堅く立つべき事を勧めます。 |
・110歳で死去(24:29) |
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B.13章の挑戦 |
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1.年を重ねたヨシュア |
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ヨシュアが「年を重ね、老人になった」と言われた時、彼は80歳近くでした。出エジプト直後が30歳くらいかと思われます。そして荒野での彷徨が40年、その後の征服の戦いが約7年と言うのが積算の基礎です。他の男性は死に絶えていました。最高でも男子は67歳くらいではなかったかと思われます。出エジプトを経験した成人の世代(つまりその時20歳以上の人々)は皆40年間の荒野での彷徨で死んでしまい、屍を曝したと記されています。その後カナンでの征服作戦が7年間続いたとして、最高でも67歳だったことでしょう。つまり、85歳のカレブと80近くのヨシュアという最長老を除き、他の人々は一回り若かったわけです。 |
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2.未占領地への挑戦 |
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ヨシュア記の1-12章までは、カナン征服戦争の記録です。エジプトから出てきたイスラエル人は約束の地であるカナンに入り、早速一つずつ町を征服していきます。それでも、占領しきれない地域が沢山残っていました。1節に、「取るべき占領地が甚だ(メオード)多い」と語られたのはその意味です。2−6節の地域を見ると、北西のフェニキヤ人の地域と南西のペリシテ領域が未占領地であったことがわかります(再び地図を参照)この地域も、40年前、カレブと共に視察した範囲内ですから、彼にとって目新しい命令ではなかったはずです。取るべき地は甚だ多かったのです。 |
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3.分配と行政機構の確立 |
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地域の広さだけではなく、働きの形態という面で言えば、ヨシュアに対して若い時代とは異なる新しい働きが期待されていました。ヨシュアは、この時まで戦闘のリーダーでしたが、これからは行政的な働きに移行する必要がありました。占領した土地を円満に分割する、そして、そこを統治する行政機構を確立するという、より難しい仕事が待っていました。ヨシュアが年を重ねたのは、このような難しい仕事を処理するために知恵と経験を得るためだったのです。私たちについても同様です。これで人生は終わりという事はなく、私たちの信仰者としての経験と知恵を必要としている分野が必ずあるはずです。 |
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4.主の約束 |
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主はただ、ヨシュアにがんばれと命令しただけではなく、「私も一緒だよ、私が彼らを追い払うよ」と約束されました(6節)。そこにヨシュアは大きな慰めと励ましを見出しました。そして、それは実現しました。23:3に、「戦ったのは主なる神だった」と述懐しています。神は、お約束を一つも違わず成就してくださったのです(23:14)。 |
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C.私たちにとっての挑戦 |
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1.高齢者の使命 |
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先ほど申しあげましたように、80歳の現役は希有の存在であったと考えられます。周りが一回り以上若い人々でしたから、彼は長老扱いされる傾向にあり、まあ、ご隠居の身分と考えてもおかしくない状況であったのです。しかし、ヨシュアはご隠居扱いを拒否して、現役であることを選びました。 |
年を取る時に、自分の使命は終わったと考えるほど悲しいことはありません。私たちが自分で想像している以上に、私たちの経験、知恵、力が必要とされているのです。年齢が重なっても、いや重なるからこそ必要とされる分野が多いことを覚えましょう。取るべき地が甚だ多いのです。 |
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2.使命に生きることが若さの秘訣 |
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彼の同僚であるカレブも、高年令にも拘わらず、自分の健康について「モーセが私を遣わした日のように、今も壮健です。私の今の力は、あの時の力と同様、戦争にも、また日常の出入りにも耐えるのです。」(14:11)と言っています。ヨシュアも同様の健康を保っていたと思われます。若い時に鍛えただけではなく、毎日の節制、鍛練を続けていたのでしょう。勿論彼もスーパーマンではありませんでしたから、本音を言えば、肉体的な衰えは感じていたことでしょう。日野原先生は「目標を持って生きている人は歳をとらない、昔から言われています。自分自身の事を言うのは気恥ずかしいのですが、こういう「ライフワーク」(ボランテイア活動と日本の医学を発展させる活動)があるからこそ、私は90歳をすぎてからも、現役で居られるのだと思います。」述べておられます。精神の若さを保つために、創造的な活動に携わることはとても大切です。 |
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3.私たちの「未占領地」とは? |
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私たちにとっての「未占領地」とは何でしょうか? |
・霊的に言えば: もっと主と交わり、もっと主と近く歩むことでしょう。完成はありえません。2ペテロ3:18に「キリスト・イエスの恵みと知識において成長しなさい」とある通りです。 |
・性格の面では: より頑固になるのではなく、より柔らかくなって、魅力的な人となることではないでしょうか。2コリント3:18には、「主の栄光を反映させながら、栄光から栄光へと、主と同じ形に姿を変えられていきます。」とあります。キリストの形に変えられる成長を続けたいものです。 |
・働きの面では: 私がこれを担うべきと示された分野を果たし終えているでしょうか。パウロは、「他人の土台の上に建てないように、キリストの聖名が未だ語られていないところに福音を述べ伝えることを切に求めて」(ローマ15:20)いました |
・信仰継承の面で言えば: 次の世代に一人でも多く主を愛する人々を創成することでしょう。ダビデは言いました、「年老いて、しらがになっていても、神よ、私を捨てないでください。私はなおも、あなたの力を次の世代に・・・告げ知らせます。」(詩篇71:18)と語っています。 |
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終わりに |
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今日私たちがなすべきことは、ヨシュアへの新たな使命を自分なりに翻訳して自分に当てはめることです。「老い」という課題に直面しているお互いも、また、そんなことは遠いことだと思っている世代も含めて、私にとって何が「未占領地」であろうかと考え、主の助けを頂いて、それを占領する一歩を踏み出したいものです。 |
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