礼拝メッセージ
(インマヌエル中目黒キリスト教会)

 
聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書第三版(著作権・新日本聖書刊行会)によります。
 
2012年11月18日
 
「忠実な奉仕者テキコ」
エペソ書連講(30)終講
 
竿代 照夫 牧師
 
エペソ人への手紙6章21-24節
 
 
[中心聖句]
 
  21,22   主にあって愛する兄弟であり、忠実な奉仕者であるテキコが、一部始終を知らせるでしょう。テキコをあなたがたのもとに遣わしたのは、ほかでもなく、あなたがたが私たちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるためです。
(エペソ6章21,22節)


 
聖書テキスト
 
 
21 あなたがたにも私の様子や、私が何をしているかなどを知っていただくために、主にあって愛する兄弟であり、忠実な奉仕者であるテキコが、一部始終を知らせるでしょう。22 テキコをあなたがたのもとに遣わしたのは、ほかでもなく、あなたがたが私たちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるためです。
23 どうか、父なる神と主イエス・キリストから、平安と信仰に伴う愛とが兄弟たちの上にありますように。24 私たちの主イエス・キリストを朽ちぬ愛をもって愛するすべての人の上に、恵みがありますように。
【 副テキスト 】
コロサイ4:7 私の様子については、主にあって愛する兄弟、忠実な奉仕者、同労のしもべであるテキコが、あなたがたに一部始終を知らせるでしょう。8 私がテキコをあなたがたのもとに送るのは、あなたがたが私たちの様子を知り、彼によって心に励ましを受けるためにほかなりません。9 また彼は、あなたがたの仲間のひとりで、忠実な愛する兄弟オネシモといっしょに行きます。このふたりが、こちらの様子をみな知らせてくれるでしょう。
 
はじめに
 
 
今年の初めから開始したエペソ書連講を今日で締め括ります。学べば学ぶほど豊かな恵みを汲むことが出来、名残惜しい感じがしますが、クリスマスを前に これで終わりにしたいと思います。

今日は、この手紙の運び屋さんとして21−22節で紹介されているテキコについて、「忠実な奉仕者テキコ――パウロの『便利屋』」との題でお話します。
 
A.パウロの「便利屋さん」テキコ
 
1.56年:パウロの金庫番として(使徒20:3−6)
 
 
・アジヤ(エペソ)出身:
テキコはアジヤ出身クリスチャンです。パウロのエペソ伝道によって救われた「異邦人クリスチャン」であったと考えられます。

・名前の意味は「機会(チャンス)」:
テキコという名前の意味は、機会(チャンス)です。

・パウロ第三次伝道旅行の最後に同行(地図@参照):
彼の名前が最初に登場するのが使徒20:3−6です。読みましょう。「パウロはここ[ギリシャ]で三か月を過ごしたが、そこからシリヤに向けて船出しようというときに、彼に対するユダヤ人の陰謀があったため、彼はマケドニヤを経て帰ることにした。プロの子であるベレヤ人ソパテロ、テサロニケ人アリスタルコとセクンド、デルベ人ガイオ、テモテ、アジヤ人テキコとトロピモは、パウロに同行していたが、彼らは先発して、トロアスで私たちを待っていた。種なしパンの祝いが過ぎてから、私たちはピリピから船出し、五日かかってトロアスで彼らと落ち合い、そこに七日間滞在した。」この記事は、パウロ第三次伝道旅行の最後の出来事です。パウロがギリシャで3ヶ月すごした後、トロアスに向かうとき、彼のみマケドニヤを経て迂回をし、他は真っ直ぐにトロアスに向かいました。そのグループは、トロアスでパウロと落ちあってエペソに向かいました。このグループの一人がテキコですが、彼だけ「アジヤ人」と記されています。多分エペソ出身、しかも、第三次伝道旅行のエペソ開拓の実だったことでしょう。同行者のリストから見ると、パウロの伝道旅行で救われた一騎当千の兵ばかりです。しかも、テモテを除いて彼らは異邦人でした。

・エルサレム支援金の金庫番として:
彼らの使命は大切な義援金を確実にエルサレムに届けることでした(1コリント16:3)。だから、これだけの人数が必要だったのです。この旅は、パウロにとって自由人として最後の旅であったこと、三回の伝道旅行を締め括る旅であったこと、エルサレムへの義援金を届けること、エルサレムでの捕縛を覚悟しての旅であったということから、極めて重要な旅でした。パウロの伝道生涯のハイライトでありました。それに同行したテキコは幸せであったと言うべきでしょう。
 
2.60年:パウロの使者として(エペソ6:21−22、コロサイ4:7−9)
 
 
・エペソ書、コロサイ書、ピレモン書の運び屋として(地図A参照):
エペソ書と同じ時に書かれたコロサイ書の締め括りを読みましょう。「私の様子については、主にあって愛する兄弟、忠実な奉仕者、同労のしもべであるテキコが、あなたがたに一部始終を知らせるでしょう。私がテキコをあなたがたのもとに送るのは、あなたがたが私たちの様子を知り、彼によって心に励ましを受けるためにほかなりません。また彼は、あなたがたの仲間のひとりで、忠実な愛する兄弟オネシモといっしょに行きます。このふたりが、こちらの様子をみな知らせてくれるでしょう。」(コロサイ4:7−9)

・諸教会の励まし手として:
この両書簡から知ることが出来るテキコの役割は、@パウロと生活を共にする:パウロの幽囚期間ずっと共にいたのか、或いは故郷のエペソに一度戻っていてパウロ安問のためにやって来たのかわかりませんが、パウロの様子や彼が何をしているかを良く知っている人物でした。つまり、パウロと苦楽を共にした人物でした。A手紙を運ぶ:先ずエペソに行き、手紙を渡し、その手紙あるいはコピーを持ってラオデキヤに行き、それからコロサイにいって同様にし、更に、ピレモンの家に行って手紙を渡すついでに、オネシモのとりなしを行ったのです。その時パウロの様子について、彼がどんな幽囚生活をしているか、伝道をしているか、皇帝に訴えて無罪を勝ち取ろうとしているかなど詳しく話したものと思われます。さらに、パウロに代わって諸教会への励ましを行いました。これは腹心の部下でなければ勤まらない大事な役割でした。
 
3.63年:テトスの代理牧師として(テトス3:12)
 
 
・ニコポリのパウロに同伴(地図B参照):
テトス3:12を読みましょう。「私がアルテマスかテキコをあなたのもとに送ったら、あなたは、何としてでも、ニコポリにいる私のところに来てください。私はそこで冬を過ごすことに決めています。」パウロはローマの牢獄から釈放された後、ニコポリに滞在しました。その時テキコも一緒でした。

・クレテ島のテトス代理牧師に:
その後、彼はクレテ島にいるテトスのピンチヒッターとして遣わされました。つまり、テトスはニコポリのパウロの許に、テキコはテトスの代理牧師としてクレタ島で奉仕をすることになりました。このことからも、テキコが如何に信頼されていたかが伺われます。
 
4.67年:テモテの代理牧師として(2テモテ4:9−13)
 
 
・パウロ第二幽囚の前、ローマからエペソに派遣(地図C参照):
2テモテ4:9−12を読みましょう。「あなた[テモテ]は、何とかして、早く私のところに来てください。デマスは今の世を愛し、私を捨ててテサロニケに行ってしまい、また、クレスケンスはガラテヤに、テトスはダルマテヤに行ったからです。ルカだけは私とともにおります。マルコを伴って、いっしょに来てください。彼は私の務めのために役に立つからです。私はテキコをエペソに遣わしました。」パウロの第二のそして殉教直前の幽囚の前に、テキコはローマからエペソに派遣されました。派遣される前は、牢獄の近くにいたと思われます。弟子の多くが離れていったその危機的状況で、パウロの側に留まりました。そして、内容は明らかではないが、何かの要件を帯びて、エペソに遣わされました。多分、テモテ第二の手紙を携えてでしょう。

・そのままテモテの代理牧師に:
テキコは、テモテに代わってエペソ教会の牧会に暫く当たりました。ですから、テモテがエペソを離れてパウロのところに行くことができたわけです。テキコは、テモテと同様パウロに深く信頼されていたことが分かります。テキコは、いわばパウロの懐刀であったわけです。
 
B.テキコの人となり(21−22節)
 
 
「あなたがたにも私の様子や、私が何をしているかなどを知っていただくために、主にあって愛する兄弟であり、忠実な奉仕者であるテキコが、一部始終を知らせるでしょう。テキコをあなたがたのもとに遣わしたのは、ほかでもなく、あなたがたが私たちの様子を知り、また彼によって心に励ましを受けるためです。」
 
このパウロの表現からテキコの人となりを汲み取りたいと思います。
 
1.「主にあって愛する兄弟」
 
 
・アジヤで誰にでも知られ、愛されていた:
(ho agapeetos adelphos=The beloved brother=よく知られた「あの」という意味)アジヤ出身であるテキコは、ふるさとの誰にでも知られ、愛されるキャラだったのでしょう。愛されるキャラっていいですね。憎まれるよりはよほど素晴らしいと思います。

・神に愛された人物:
何よりも、神に愛された人物だったのでしょう。神を愛する人はまた、神に愛される人でもあります。
 
2.「忠実な奉仕者」
 
 
・パウロに対して忠実:
「忠実な奉仕者」という言葉が使われています。奉仕者(pistos diakonos=ミニスター)とは第一義的にパウロに対して忠実に仕えるものでありました。偉大な働きをした宣教師パウロの手となり足となって仕えた器でした。余り目だたない人であったと思われますが、パウロに対する忠実さは、抜きん出ていたのではと思います。他の人々が打算や「事情によって」去っていった時も、最後までパウロに仕えました。

・与えられた奉仕に忠実さ:
彼の忠実さは与えられた仕事に対する忠実さに現れました。そして最も困難な仕事、つまり、代打要員としての仕事、パウロの代理としての仕事、テトスやテモテの代行牧師としての仕事を見事にやり遂げました。これは、野心をもった人には出来ない仕事です。はっきり言って、黒子に徹するスピリットです。

・神に忠実:
黒子に徹するとは、己に死んだ器にしか出来ない仕事です。テキコは全く己に死んだ器だったのでしょう。
 
3.励まし手
 
 
テキコの使命は二つありました:

・パウロの獄中生活を知らせる:
21節に「あなたがたにも私の様子や、私が何をしているかなどを知っていただくために・・・一部始終を知らせるでしょう。」と記されています。パウロが比較的緩やかな軟禁状態にあったこと、伝道の自由が許されていたこと、近々釈放の希望があることがその内容であったと思います。エペソの信徒たちは、必要以上の心配をしていた可能性があったからです。

・それによって信徒たちを励ます:
22節には「また彼によって心に励ましを受けるためです。」とも記しました。テキコは、ただ事実を知らせるだけではなく、自分が励まされたという個人的な証をもって、エペソ信徒たちを励ますことが使命だったのです。「あの人の話を聞くと、がっかりさせされれることが多いなあ」という評判ではなく、あの人の話を聞くと、いつも励まされる、慰められて温かい気持ちになる」というような評判を得たいものですね。
 
おわりに
 
 
私たちも、目立たなくてもよいから、「忠実な奉仕者」との称号を頂きたいものです。主はそれを可能にしてくださいます。
 
お祈りを致します。