礼拝メッセージ
(インマヌエル中目黒キリスト教会)

 
聖書の言葉は旧新約聖書・新改訳聖書第三版(著作権・新日本聖書刊行会)によります。
 
2013年1月27日
 
「それぞれの持ち場」
総会礼拝に臨み
 
竿代 照夫 牧師
 
士師記7章15-22節
 
 
[中心聖句]
 
  20,21   三隊の者が角笛を吹き鳴らして、つぼを打ち砕き、それから左手にたいまつを堅く握り、右手に吹き鳴らす角笛を堅く握って、「主の剣、ギデオンの剣だ。」と叫び、それぞれ陣営の周囲の持ち場に着いたので、陣営の者はみな走り出し、大声をあげて逃げた。
(士師記7章20-21節)


 
聖書テキスト
 
 
15 ギデオンはこの夢の話とその解釈を聞いたとき、主を礼拝した。そして、イスラエルの陣営に戻って言った。「立て。主はミデヤン人の陣営をあなたがたの手に下さった。」
16 そして、彼は3百人を三隊に分け、全員の手に角笛とからつぼとを持たせ、そのつぼの中にたいまつを入れさせた。17 それから、彼らに言った。「私を見て、あなたがたも同じようにしなければならない。見よ。私が陣営の端に着いたら、私がするように、あなたがたもそうしなければならない。18 私と、私といっしょにいる者がみな、角笛を吹いたなら、あなたがたもまた、全陣営の回りで角笛を吹き鳴らし、『主のためだ。ギデオンのためだ。』と言わなければならない。」
19 ギデオンと、彼といっしょにいた百人の者が、真夜中の夜番の始まる時、陣営の端に着いた。ちょうどその時、番兵の交替をしたばかりであった。それで、彼らは角笛を吹き鳴らし、その手に持っていたつぼを打ちこわした。20 三隊の者が角笛を吹き鳴らして、つぼを打ち砕き、それから左手にたいまつを堅く握り、右手に吹き鳴らす角笛を堅く握って、「主の剣、ギデオンの剣だ。」と叫び、21 それぞれ陣営の周囲の持ち場に着いたので、陣営の者はみな走り出し、大声をあげて逃げた。22 3百人が角笛を吹き鳴らしている間に、主は、陣営の全面にわたって、同士打ちが起こるようにされた。それで陣営はツェレラのほうのベテ・ハシタや、タバテの近くのアベル・メホラの端まで逃げた。
 
始めに
 
 
第65次教会総会の朝を迎えました。年数が表している通り、1948年、丸の内で発足し、広尾を経て、中目黒と私たちの歴史が65年経過したことを意味します。この総会では、様々な役割の分担がなされますが、今日はそれに関連して、士師7章から「それぞれの持ち場」ということを考えたいと思います。

この章は、当時イスラエルを圧迫していたミデヤンの勢力と戦い、奇跡的な形で勝利を収めたギデオンとその3百人の痛快な物語です。
 
A.戦いの事情
 
1.ミデヤンの圧迫(地図参照)
 
 

ミデヤン族は、イスラエルの南東アラビヤ砂漠に近いところに住む遊牧民です。イスラエルとは親族でありましたが、出エジプト後の接触で敵対関係が生まれていました。イスラエルがカナンに定着した後の「士師」時代(BC1200年ごろ)、イスラエルの混乱に乗じてイスラエルに侵略し、略奪を繰り返すようになりました。テントをラクダに積んでやってきたミデヤン人は、イスラエルの収穫期に略奪を行なったため、イスラエルは大変苦しみました。
 
2.ギデオンの召命
 
 
そのような時、イスラエルを救う士師として、神が選ばれたのがギデオンです。

・マナセ族の一人:
彼はマナセ族の一人ですが、格別指導的な家柄の出身でもなく、普通の農民でした。

・臆病な若者:
普通どころか、ミデヤン人の略奪を恐れて、ぶどうを踏む酒ぶねに潜り込んで、音を立てないように麦を踏むという臆病な若者でした。

・主の召命で立つ:
神は不思議なお方です。そのような名も無い、臆病な若者を召して、ご自分のお仕事に使われようとされました。何度も断ろうとしたギデオンを主は押し出して、士師として任命されます。
 
3.3百人の絞込み
 
 
・キデオンの召集と応答:
士師として立ったキデオンは、ミデヤン人が隣のアマレク人と共に襲ってきたのを見て、自分の部族のマナセに呼びかけて兵隊を招集します。更にアシェル族、ゼブルン族、ナフタリ族にも声をかけると、大勢のボランティア兵士達が集まりました。その数何と3万人余り、これだけでも勝利が予感できるようでした。

・軍隊をふるいにかける:
32000−22000−9700=300:しかし、神さまは不思議なお方です。これでは多いと仰るのです。ミデヤンの数は恐らくそれ以上、少ないと仰るならば分かりますが、多いとはこれ不思議です。主は「この人数で勝つと、自分達の力で勝った、と自慢する可能性があるからだ」と仰います。そこでギデオンは言います、「今びくびくしているものがあれば、さっさと家に帰りなさい。」と。何と2万2千人がぞろぞろ家に帰るではありませんか。何とも正直な話です。残ったのは1万人です。

・手で水を舐めた(注意深い)300人(イラスト@):
しかし、主は再度仰いました。「これでもまだ多い。水辺に行って、どんな風に水を飲むかをテストしなさい。」と。ギデオンは命令を発しします。「さあ、戦いが近い。今のうちに水を飲んでおけ。」と。その命令で、みんなが水辺に殺到します。我先にはいつくばって水を飲むものが殆どでしたが、稀に、周りを用心しながら膝をついて手を伸ばし口に手を当てて飲んだものがいました。その数3百人、それをキデオンは選びました。相手は数万人、味方は3百、これでどうやって戦えばいいのでしょうか。

 
B.戦いの方法
 
1.敵の意表をつく作戦
 
 
・夜襲による混乱を目指す:
まず、計画したのは、夜襲です。敵は地理を良く知らない外国人、こちらは、勝手知ったるホームグラウンド、夜襲ならば効果的に戦えます。

・大勢の攻撃のような「印象」(イラストA):
ギデオンが取ったのは、いわば偽装作戦です。3百人全員に、左手に松明を入れた壷を持ち、右手に角笛を持つように命じました。合図と共に、いっせいに松明をかざし、角笛を吹くという奇策です。普通、角笛は百人隊長が隊員を指揮するために使うものでした。ですから、3百もの角笛が鳴れば、300x100で3万人もの軍隊が押し寄せてきたような印象を与え、敵をパニックに陥れるのです。

 
2.適切な人事配置と行動
 
 
・3百が等距離で配置される:
この作戦が成功するためには、敵をしっかりと取り囲み、いっせいに行動する必要がありました。ギデオンは、3百を3隊に分け、きちんと距離を図って3百人を配置します。一人でもいい加減な場所にいてはなりません。一人でもいい加減な時に松明を見せてはなりません。恐らく地図でも作って一人ひとりを等距離に置いていったことでしょう。もちろん、夜陰に乗じた隠密な行動が要求されました。

・同時に松明を灯し、角笛を吹く:
真夜中になって、敵方の見張り番の交替が行われました。丁度、相手の警戒が緩む頃です。ギデオンの率いる中核隊が一斉に壷を打ち割り、松明を掲げます。右手の角笛を大きく吹き鳴らし、そして叫びます。「主の剣、キデオンの剣だ」と。それを聞くや、右の小隊も、左の小隊も一斉にそれに倣って松明を掲げ、角笛を鳴らします。戦争中の焼夷弾のような光と声が敵軍を包みます。興味深いことに、この時は「剣」といって叫ぶだけで、腰から吊るした剣は刺したままです。
 
C.戦いの勝利
 
1.敵の同士討ちと敗走
 
 
寝耳に水のミデヤン軍は大パニックになりました。源義経によってひよどりの谷から襲われた平氏の軍と似たような状況です。彼らは一斉に逃げ始めます。暗がりの中、敵も味方も見えぬまま同士打ちが始まり、混乱は益々広まっていきます。ギデオン軍は、自分の剣を使わぬまま、勝利してしまうのです。
 
2.フォロアップの戦いによって
 
 
・多くの加勢:
もちろん3百のままで戦いを進めたのではなく、先に家に帰りかけた兵士達にもフォロアップを呼びかけます。彼らもおっとり刀で戦いに加わり、勝利を決定的なものにします。エフライム族は、当初の招集の対象でなかったものですから、機嫌を悪くします。「何故俺たちに知らせずに戦ったのか」と。戦いに勝つと、こんな不平も生まれるものですね。彼らはギデオンの説明を聞いて頷き、戦いに参加します。

・参加しなかった人も:
もっと困ったのは、追撃の最中に糧食を依頼されたのに断った町が二つもあったということです。人間模様を見る思いです。
 
おわりに
 
1.持ち場は何かを捉えよう
 
 
今日の総会で、役割分担が発表されます。役員・運営委員・委員長だけではなく、今年から奉仕チームのリーダーも発表されます。自分の名前がないという人もいます。むしろ、その方が大勢です。しかし、奉仕チームには、誰でも幾つでも参加できますし、参加してくださることが期待されています。大きな戦いで、私の持ち場を確認しましょう。どこにも入れない人もいるでしょう。チーム名にはありませんが、祈りの座という持ち場もあります。
 
2.持ち場をしっかり守ろう
 
 
そして、持ち場を定めたならば、その持ち場をしっかりと守り、助け合って共に戦いましょう。締め括りの賛美「立てよ、いざ立て」の中に「己が持ち場に勇み進め」とあります。この一年、それぞれの持ち場をしっかり守って主の勝利を期待しましょう。
 
お祈りを致します。